発光

その日も山に登るつもりで大分まで足を運んだ。前日から大雨でどうしようかと思ったのだけど、やっぱり行くことにした。
山霧が木々のあいだに充満していた。視界は悪いし、手足は濡れ、山の音は雨にかき消される。登山道は小さな川のようになっていて、それを股のあいだでかわしながら歩いていく。雨、雨、雨。いままで晴れか曇りの時にしか訪れたことがなかった由布岳の慣れない雨道だった。
流れに逆らうようにどんどん歩みを進めると、一歩一歩が打ち消されているような感覚で、歩いているのになにも進めていないというか、妙な浮遊感と不安が蓄積されていく。
しばらく行くと、深い樹林帯を越えて、分厚い霧の隙間から少しずつ光が差し込んできた。ホワイトアウトした風景に光が乱反射して白色に発光することで、体積をもった光のかたまりみたいに見えて、それをそのまま手で掴んでみたくなった。景色をぼうっと見ていると、心もスッと晴れたような気がした。天候に合わせてぼくの心も動いている感触があった。